原理的に劣化しない不揮発性メモリを内蔵したCPUを開発
2012年6月4日
株式会社半導体エネルギー研究所
株式会社半導体エネルギー研究所(代表取締役:山﨑 舜平)では結晶系酸化物半導体を用いて原理的に劣化しない不揮発性メモリを有するCPUを開発しました。
この技術はきわめて小さいオフ電流特性を有している結晶系酸化物半導体を利用して、不揮発性のメモリを構成し、電源をオフしてもデータを保持できる結晶系酸化物半導体をCPUに構成したものです。
酸化物半導体デバイスはディスプレイにおいて、シャープ株式会社および弊社との共同開発により世界で初めて量産技術を確立し、今年から量産を始めています。今後さらなる発展が見込めるデバイスです。
結晶系酸化物半導体は1985年に無機材研の君塚昇博士らによって発表され、その後も10年以上において精力的に研究が続けられてきました。半導体エネルギー研究所では薄膜でありながら結晶系酸化物半導体(CAAC:C-Axis Aligned Crystal)をIGZO材料で見いだしました。それを用いたTFT(薄膜トランジスタ)において、そのオフ電流が50yA/μm@85℃(50x10-24A/μm)と非常に小さいことを世界で初めて見いだしました。
このきわめて小さいオフ電流を用いることによって、不揮発性のメモリ素子への応用をおこない、昨年および今年学会発表しております。このメモリ素子はフラッシュメモリなどの既存の不揮発性メモリ素子とは異なり原理的に劣化せず、書き換え回数に制限がないという特徴を持っております。また保持性能を生かしたイメージセンサも昨年発表しております。
さらに、近年携帯用電子機器の普及により、CPUの消費電力削減が要望されております。昨年NEDOにてノーマリオフコンピューティングのプロジェクトが立ち上げられ、CPUにMRAMなどの不揮発性メモリを内蔵し、データを保持することによりCPUの電源をノーマリオフとする検討が始められました。しかし、不揮発性メモリとして業界で良く知られているMRAM、ReRAMは書き込みに消費する電力が大きく、オーバヘッド電力が増加するといった問題を有しております。
このたび、開発いたしました酸化物半導体を用いたメモリは原理的に劣化せず、且つ書き換え電力が極めて少なく、省エネルギー時代のニーズ・課題に対応することが可能なメモリ、CPUとなっております。
弊社ではその酸化物半導体メモリを内蔵し、動作必要時以外は電源をオフしたノーマリオフのCPUの開発し、通常動作時の1/100電力の削減に成功いたしました。(音楽再生プログラム適応時)
今回のノーマリオフCPUは、2012年6月3日~8日にボストンで行われますSID2012で発表予定です。
【用語解説】 ・酸化物半導体 酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)が代表的なものとして知られており、多くは広いバンドギャップを有しています。TFTとしてはIGZO(InGaZnO)を用いたものがその可能性が大きいとして集中的に研究開発されています。 ・NEDOノーマリオフコンピューティング基盤技術開発プロジェクト ノーマリオフコンピューティングとは不揮発性素子を積極的に活用して、現行機器を大きく上回る超低消費電力化を実現するためのコンピューティング技術です。NEDOにて昨年その開発プロジェクトが立ち上げられました。 ・CAAC(C-Axis Aligned Crystal) 弊社が世界で初めて見いだした結晶系薄膜酸化物半導体構造であり、C軸方向に配向し、ab面には必ずしも配向を示さないという特徴を有する。TFT作製時に信頼性に優れる。 |
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【株式会社半導体エネルギー研究所の概要】
以上 <お問い合わせ先>
補足資料
1-1.酸化物半導体の分類 ![]()
1-2.酸化物半導体の応用
![]() 2-1.開発したノーマリオフCPUの概要
3-1.1MbitNOR型メモリへの応用(IMW2011発表)
3-2.DRAM型メモリへの応用(IMW2012発表)
3-3.イメージセンサへの応用(2011VLSI Technology 発表)
【メモリ比較表】
1):D.Halupka et al., ISSCC pp256-258(2010)
2):Z.Wei et al., IEDM Tech.Dig.pp293-296 (2008) |