有機EL材料の設計から製造、パネルの試作までを一貫して社内で開発。
先駆的な高性能有機ELディスプレイを目指して。
有機ELディスプレイは、今や液晶ディスプレイと並びディスプレイの主流です。さらなる高性能化(高効率、長寿命、高精細、高色域)を目指して盛んに開発が行われています。当社では、高効率で長寿命、高精細、高色域な高性能有機ELディスプレイを実現するため、有機EL材料の設計から製造、ディスプレイパネルの試作に至るまでの全工程を社内で行っています。
まずは分子設計をして、スーパーコンピュータを用いたAIと材料解析シミュレーションによる物性予測を行います。その後、有機合成を行い、テスト用発光素子を試作。特性を評価します。すべての工程において、ディスプレイに最適な材料、素子を追求し、高性能有機ELディスプレイの試作品作製につなげます。
▲有機EL材料のフォトルミネッセンス(溶液中)
▲有機EL素子(赤色(左)、緑色(右))
半導体エネルギー研究所が独自に開発した技術で、有機ELディスプレイの高効率化・低駆動電圧化・長寿命化を可能にします。燐光性有機EL素子では、発光層において、ホスト材料の励起エネルギーが燐光発光材料(ゲスト材料)にエネルギー移動することで燐光発光材料が発光します。従来は、このエネルギー移動でエネルギーロスが発生し、発光効率・駆動電圧・寿命に悪影響を及ぼしていました。SELでは、電子輸送性材料とホール輸送性材料との間で形成するエキサイプレックスを、燐光発光材料へのエネルギー移動媒体に用いるエネルギー移動機構を開発し、2011年に特許出願、この技術をExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)と命名しました[1]。この技術によって、問題となっていたエネルギーロスを解消し、燐光性有機EL素子の発光効率・駆動電圧・寿命の課題を同時に解決することに成功しました[2],[3]。本技術は有機ELディスプレイには不可欠な技術の一つであり、市販されている有機ELディスプレイの緑色や黄色の発光層で用いられている基本技術です。また、赤色の発光層でも一部に使われています。
▲概念図
▲ExTETの基本的な原理
>>プレスリリース文書「株式会社半導体エネルギー研究所 有機EL技術の重要特許の有効性が認められました」
[1] S. Seo et al., “Exciplex-triplet energy transfer: A new method to achieve extremely efficient organic light-emitting diode with external quantum efficiency over 30% and drive voltage below 3V,” Jpn. J. Appl. Phys., 53, 042102-1 (2014). DOI: 10.7567/JJAP.53.042102
[2] T. Takahashi et al., “Emission mechanism in phosphorescent and fluorescent OLED utilizing energy transfer from exciplex to emitter,” J. Soc. Inf. Disp., 24(6), 360 (2016).
[3] S. Seo et al., “Recent development of organic light-emitting diode utilizing energy transfer from exciplex to phosphorescent emitter,” Proc. of SPIE, 9941, 99410J-1 (2016).
電流励起の場合、三重項励起子の生成確率(内部量子収率)は75%となり、蛍光をもたらす一重項励起子は25%しか生成されません。このため、蛍光素子の発光効率は、燐光素子よりも低くなります。しかし、何らかの方法によってこの一重項励起子を増やすことができれば、発光効率は向上します。その方法の一つとして、TTA(発光層において、三重項励起子どうしの相互作用によって、一重項励起子が生じる現象)があります。当社では、このTTAの生成率を高める素子構造を見出し、高い発光効率を持つ蛍光素子を開発しました[4],[5]。
▲TTAによる蛍光素子の発光効率向上
▲TTAのエネルギー状態図
まずは分子設計をして、スーパーコンピュータを用いたAIと材料解析シミュレーションによる物性予測を行います。その後、有機合成を行い、テスト用発光素子を試作。特性を評価します。すべての工程において、ディスプレイに最適な材料、素子を追求し、高性能有機ELディスプレイの試作品作製につなげます。
▲有機EL材料のフォトルミネッセンス(溶液中)
▲有機EL素子(赤色(左)、緑色(右))
有機EL材料・素子開発 ―高輝度化・長寿命化技術―
SEL独自技術 ExTET®
半導体エネルギー研究所が独自に開発した技術で、有機ELディスプレイの高効率化・低駆動電圧化・長寿命化を可能にします。燐光性有機EL素子では、発光層において、ホスト材料の励起エネルギーが燐光発光材料(ゲスト材料)にエネルギー移動することで燐光発光材料が発光します。従来は、このエネルギー移動でエネルギーロスが発生し、発光効率・駆動電圧・寿命に悪影響を及ぼしていました。SELでは、電子輸送性材料とホール輸送性材料との間で形成するエキサイプレックスを、燐光発光材料へのエネルギー移動媒体に用いるエネルギー移動機構を開発し、2011年に特許出願、この技術をExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)と命名しました[1]。この技術によって、問題となっていたエネルギーロスを解消し、燐光性有機EL素子の発光効率・駆動電圧・寿命の課題を同時に解決することに成功しました[2],[3]。本技術は有機ELディスプレイには不可欠な技術の一つであり、市販されている有機ELディスプレイの緑色や黄色の発光層で用いられている基本技術です。また、赤色の発光層でも一部に使われています。
▲概念図
▲ExTETの基本的な原理
>>プレスリリース文書「株式会社半導体エネルギー研究所 有機EL技術の重要特許の有効性が認められました」
[1] S. Seo et al., “Exciplex-triplet energy transfer: A new method to achieve extremely efficient organic light-emitting diode with external quantum efficiency over 30% and drive voltage below 3V,” Jpn. J. Appl. Phys., 53, 042102-1 (2014). DOI: 10.7567/JJAP.53.042102
[2] T. Takahashi et al., “Emission mechanism in phosphorescent and fluorescent OLED utilizing energy transfer from exciplex to emitter,” J. Soc. Inf. Disp., 24(6), 360 (2016).
[3] S. Seo et al., “Recent development of organic light-emitting diode utilizing energy transfer from exciplex to phosphorescent emitter,” Proc. of SPIE, 9941, 99410J-1 (2016).
蛍光素子の発光効率向上 TTA
電流励起の場合、三重項励起子の生成確率(内部量子収率)は75%となり、蛍光をもたらす一重項励起子は25%しか生成されません。このため、蛍光素子の発光効率は、燐光素子よりも低くなります。しかし、何らかの方法によってこの一重項励起子を増やすことができれば、発光効率は向上します。その方法の一つとして、TTA(発光層において、三重項励起子どうしの相互作用によって、一重項励起子が生じる現象)があります。当社では、このTTAの生成率を高める素子構造を見出し、高い発光効率を持つ蛍光素子を開発しました[4],[5]。
▲TTAによる蛍光素子の発光効率向上
▲TTAのエネルギー状態図
[4] T. Suzuki et al., “Highly efficient long-life blue fluorescent organic light-emitting diode exhibiting triplet-triplet annihilation effects enhanced by a novel hole-transporting material,” Jpn. J. Appl. Phys., 53(5), 052102 (2014). DOI: 10.7567/JJAP.53.052102
[5] N. Hashimoto et al., “Investigation of Effect of Triplet-Triplet Annihilation and Molecular Orientation on External Quantum Efficiency of Ultrahigh-Efficiency Blue Fluorescent Device,” SID Symp. Dig. Tech. Pap., 47, 301 (2016).
市場のニーズや動向を見極めながら、他にも様々な有機EL材料・素子技術を開発し、より高性能な有機ELディスプレイの実現を追求しています[6],[7],[8]。
[6] Y. Takita et al., “Highly Efficient Deep-Blue Fluorescent Dopant for Achieving Low-Power OLED Display Satisfying BT.2020 Chromaticity,” SID Symp. Dig. Tech. Pap., 49(1), 138 (2018). DOI: 10.1002/jsid.634
[7] T. Ishimoto et al., “Ultralong-Life Deep-Blue OLED Device Achieved by Controlling the Carrier Recombination-Site,” SID Symp. Dig. Tech. Pap., 236 (2021).
[8] T. Watabe et al., “Ultrahigh-Performance Blue Fluorescent OLED Achieving Efficiency over 250 cd/A/CIEy Utilizing Organic Carrier-Transport Material with Low Refractive Index,” SID Symp. Dig. Tech. Pap., 247 (2021).
有機ELディスプレイ開発
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部屋が暗ければ照明のスイッチをオン。
このような何気ない日常にも発明のヒントは隠れています。
有機EL照明
有機EL照明は低消費電力、長寿命でさらに自然光に近い光を再現できる演色性に優れています。また水銀を含まず、面光源で薄くて軽くフレキシブルという環境配慮やデザイン性の点でも魅力的な照明です。当社では、ライトボード[9]、フレキシブル照明[10]の開発を進め、その実用化、さらには有機EL照明の普及に向け、さらなる電力効率、寿命、演色性の向上を目指しています。
[9] S. Seo et al., “Highly Efficient Long-Lived Blue Fluorescent OLED Achieving External Quantum Efficiency over 8% and Its Application to OLED Lightings,” SID Symp. Dig. Tech. Pap., 41, 1837 (2010).
[10] N. Ohsawa et al., “Large-Sized Flexible Lighting with Highly Efficient OLEDs,” SID Symp. Dig. Tech. Pap., 44, 923 (2013).
※ ExTETは、半導体エネルギー研究所の登録商標です (商標登録第5666910号) 。